障害者総合支援法とは?
障害者に関する施策は、2003年4月に身体障害者、知的障害者、障害児に対する「支援費制度」の導入が決まり、従来の措置制度から大きく転換しました。しかし、支援費制度の導入によってサービス利用者が急増し、国と地方自治体の費用負担だけではサービス利用に対する財源確保が困難になっています。また、サービス提供に関して、これまで身体障害、知的障害、精神障害という障害種別ごとに縦割りで整備が進められてきたことから「格差」が生じ、事業体系がわかりにくい状況となっています。精神障害者は支援費制度にすら入っていない状況の改善が必要であることも指摘されていました。
さらに、各自治体のサービス提供体制と整備状況が異なり、全国共通のサービス利用ルールもないため大きな地域間格差も生まれています。結果的に、働く意欲のある障害者が必ずしもその機会を得られていないという状況も見えてきました。こうした制度上の問題を解決し、障害者が地域で安心して暮らせる社会を実現するために「障害者自立支援法」が2005年(平成17年)10月31日に成立し、翌2006年(平成18年)4月1日から施行されました。
その後、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて、障害者(児)を権利の主体と位置づけた基本理念を定め、制度の谷間を埋めるために障害児については児童福祉法を根拠法に整理しなおすとともに、難病を対象とするなどの改正を行い、2013年(平成25年)4月1日に障害者総合支援法に法律の題名も変更されて施行されました。(法律の基本的な構造は障害者自立支援法と同じです。)
☆ 障害者総合支援法のポイント
1障害者施策を一元化
身体障害、知的障害、精神障害という障害の種別に関係なく、共通の仕組みによって共通のサービスが利用できるようになりました。
2利用者の利便性向上
サービス体系を見直して利用者がわかりやすく使いやすいものになりました。33種類に分かれていた施設体系が再編されています。
3就労支援の強化
働きたいと考えている障害者に対して、就労の場を確保する支援の強化が進められています。
4支給決定のプロセスを明確化
全国共通のルールに従って、支援の必要度を判定する尺度(障害支援区分)を導入し、支給決定のプロセスを明確にしました。
5安定的な財源を確保
国の費用負担の責任を強化し(費用の2分の1を負担)、同時に、サービス費用をみんなで支えあう仕組み(原則として費用の1割負担)になりました。
申請からサービス利用までの流れ
障害福祉サービスを利用するためには、市町村にサービス利用申請をして審査、判定を受ける必要があります。その結果、障害支援区分が決定され受給者証が交付されます。利用者は、サービス提供事業者と契約し、サービスの利用が始まります。
障害者総合支援法の対象となる障害者は、以下の要件が必要です。
- 身体障害者福祉法に規定されている身体障害者
- 知的障害者福祉法に規定されている知的障害者のうち18歳以上の者
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定されている精神障害者のうち18歳以上の者
- 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって18歳以上の者
☆ サービス利用の手続き
1.相談
サービス利用を希望する人は、市町村または相談支援事業者に相談します。相談支援事業者は、市町村の指定した事業所で障害福祉サービスの申請前の相談や申請手続きの支援、サービスを利用する場合の計画書の作成、サービス事業者との連絡調整などを行います。
2.申請
相談を終えてサービス利用を希望することが決まったら、住んでいるところの市町村にサービス利用の申請を行います。現在施設に入所していて居住地がない場合は、入所前の居住地に申請を行います。児童の場合は申請手続きを保護者が行うこともできます。
3.審査・判定
申請を行うと市町村から現在の生活や障害に関して調査を受けます(アセスメント)。この調査結果をもとに市町村は審査・判定を行い、どのくらいのサービスが必要かという障害程度区分を決定します。
4.認定・通知
障害支援区分や介護する人の状況、申請者の希望をもとにサービスの支給量が決まり通知されます。サービス利用者には「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
5.事業者と契約
支給決定が決まると相談支援事業者のサポートを受けて、サービス等利用計画書を作成します。利用者が、計画作成にかかる費用を支払うことは原則ありません。計画が決定したらサービス提供事業者との契約を行います。
6.サービス開始
契約が完了した段階でサービスが始まります。
自立支援医療の仕組みとは?
これまでの障害者の医療費は、精神通院医療(精神保健福祉法)、更生医療(身体障害者福祉法)、育成医療(児童福祉法)という別々の医療制度で運営されていたものが、障害者総合支援法によって一本化され「自立支援医療制度」になりました。支給認定の手続き、利用者負担の仕組みを共通化し、指定医療機関制度を導入しています。
サービス利用の仕方

自立支援医療を利用する障害者と障害児は、最初に申請を行います。申請先は従来の手続き方法と変わってないので、育成医療と精神通院医療の対象者であったものは都道府県、更生医療の対象者であった場合は市町村が申請窓口となります。更生相談所の判定など、それぞれに認定作業が実施され、支給認定の通知が申請者に通知されます。
地域生活支援事業とは?
障害者総合支援法では、「地域生活支援事業」が創設されています。都道府県および市町村が地域の実情に応じて、必要と思われる事業に柔軟に取り組みます。各市町村は、「障害福祉計画」の中に地域生活支援にかかわる施策を盛り込み実施することになっています。予算的には、事業に対して国が50%以内、都道府県が25%以内を補助します。
☆ 地域生活支援事業の中身は?
1相談支援事業
障害者総合支援法で自立支援給付を受ける障害者が、申請手続きや、サービス利用契約を結ぶ段階で相談業務を行います。相談支援事業者に委託し、障害者の支援を行います。市町村では、支援策の強化を行うために社会福祉士、精神保健福祉士、保健士を配置します。
2コミュニケーション支援事業
障害者の社会参加の機会を支援するために、手話通訳派遣、要約筆記派遣、手話通訳設置事業などのコミュニケーションにかかわる支援事業を実施します。
3日常生活用具給付事業
日常生活用具とは実用性が認められた安全に使用できる用具で、日常生活の困難を改善し、自立支援につながるものとされています。ただし、開発や改良に専門知識を要するもので、一般的に普及していないものと規定されています。
日常生活用具給付事業では、以下に関して給付を行っています。
・介護・訓練支援用具
・自立生活支援用具
・在宅療養等支援用具
・情報・意思疎通支援用具
・排泄管理支援用具
・住宅改修費
4移動支援事業
屋外で移動することに制限を持っている障害者、一人で外出できない障害者を対象に移動にかかわる支援を行います。支援事業には、「個別支援型」「グループ支援型」「車両移送型」があります。
5地域活動支援センター機能強化事業
障害者の創作的活動、生産活動、社会との交流の促進を目指す事業です。地域活動支援センターの機能強化を図るために専門職の配置、地域住民ボランティア育成、生きがい事業などを展開します。
6生活サポート事業
介護給付の対象外になる障害者に対して、必要と認められる場合に、日常生活・家事の支援を行う事業です。